50代からでも、自分の大好きなことを探せるのか?

50代男が、大好きなことを探しはじめたらどうなるのか?

『精霊幻想記』は理不尽な出来事への反抗の物語(ネタバレあり)

こんにちは。
今日は、先日24巻を読んだ『精霊幻想記』についてです。


本書は、いわゆる「転生もの」ではありますが、一風変わっています。というのも、地球で暮らしていた人物が死んで転生して、異世界でやりなおす、というパターンではないからです。地球で暮らしていた人物が死ぬ、というのはパターン通りなのですが、異世界で既に暮らしていたリオという子どもの中に入るという形を取っているのです。なので、主人公リオは、地球で暮らしていた記憶は持つものの、その世界の住人としての意識は保っているのです。なので、死ぬ前の知識を活かして無双みたいな単純な話にはなっていません。

 

『精霊幻想記』の根底にあるには、人は理不尽な出来事に対して、どう抗うのか?という重いテーマ。

 

この本の主人公には、数々の理不尽な出来事が襲い掛かります。
例えば、

 

・母親を目の前で殺されてしまう
 (その時、リオは意識はあるものの動けない状態)
 (しかも、その犯人は父親も殺していた)
・学校での事件の犯人とされ、姿を消すことを余儀なくされる
・恩師が、政略結婚させられる
 (リオが武力で阻止して、花嫁をかっさらう)
・学校での事件を黙認した人物を救出さざるを得なくなる
・仲間たちを守るために「超越者」の力を使った結果、世界中の人の記憶から消されてしまう(もちろん守った仲間たちの記憶からも消える)
・仲間たちに忘れられても、彼らのために力を振るうリオ。そのたびに、自分の中からも彼らの記憶が消えてしまうリスクを負う


どうでしょう。他にもいっぱいありますが、大きなところだけでこれだけあります。
とくに、世界中の人間に忘れられるって、あまりにも理不尽!

 

そして、理不尽は主人公だけでは収まりません。

 

この世界の「勇者」は、日本から召喚されるのですが、勇者の覚醒条件が「死ぬこと」とこれまたえぐい設定。リオの敵として登場した勇者「聖女エリカ」も、異世界に召喚され、村人たちによって理不尽に殺されてしまったことを機に覚醒するのです。自分にいやけがさして死のうとしても死ぬことさえできない。そして、自分を止めてくれる人をもとめ、戦いを広げていくのです。そうなると、単純に悪者と認定するには、同情の余地が残ってしまいますよね。死ぬことでしか、逃れられない運命というのも悲しすぎます。

 

最新の24巻では、勇者タカヒトも、理不尽な目に合い、殺されてしまいます。彼も人を殺してはいけない、ということを絶対のものと考えていましたが、守りたい人を守ることができずに殺されたことで、一気に反転してしまいます。それが25巻のタイトル「闇の聖火」として表現されています。

 

そして、その「勇者」というシステムも、この世界の「高位精霊」が「七賢人」に騙されて封印されてしまったもので、「高位精霊」は「七賢人」を恨んでいるというのです。

 

極めつけは、かつて世界を全ていた「神さま」が、急に世界から去ってしまったことが、理不尽の発端になっていると思われること。神が管理する世界は順調だったのに、なぜ去ってしまったのか?残された「七賢人」は、さぞ理不尽さを感じたことでしょう。そして、神を探すために、様々な禁忌にも手を出していくのです。このあたりの設定は、「転生したらスライムだった件」と少し似ていると感じています。やはり、絶対的な力を持つ存在が、突然姿を消すというのは、残された側にとっては理不尽にしか思えないことでしょう。

 

さて、この『精霊幻想記』では、「理不尽の連鎖」から、人はどう抜け出していけるのか?24巻まででは、その答えは見えてきません。私たちの暮らす日本にも、理不尽に思えることはありますが、この本にあるようなレベルの理不尽さを経験することは、ほとんどないように思います。私がこれまで経験してきたことなど、ほんの些細なことに感じられます。

 

そんなこんなで、イケメンで超強い主人公が活躍する小説ではありますが、根底にはなかなか重たいテーマが流れている『精霊幻想記』。この先、主人公たちはどうなっていくのか気になりますが、続きが読めるには、2024年になりそうです。それまで気長に待ちたいと思います。興味が出てきた方は、ぜひ読んでみてください。


精霊幻想記 1.偽りの王国

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
いいな、とおもったら、読者登録お願いします!
2023年9月末までに読者100人目標です。
登録お願いします!

☆やコメントをくださるみなさん、ありがとうございます!とってもうれしいです。

はてなブログランキングにも参加しています。読んでみて、ちょっとでも心が動いたという方は、ぜひクリックお願いします。